2020年11月:Vendée Globe

「Vendée Globe」は世界で最も過酷なヨットレースとして知られており、1989年の第1回以来4年毎に開催されています。開催国のフランスでは、テニスの「全仏オープン」や「ツール・ド・フランス」と同じくらい人気があり、他のヨーロッパ諸国でも高い認知度を誇ります。白石康次郎氏は2016年にアジア人として初めてこのレースに参戦しましたが、残念ながらマストが折れてしまい、完走には至りませんでした。次の第9回「Vendée Globe」は2020年11月8日にスタートします。白石氏はDMG MORI SAILING TEAMの一員としてこの大会に参加し、約80日間におよぶ航海の完走を目指します。
――40,075km、21,638マイル:地球の外周であり、地球を1周するコースの長さの参考です。
――記録保持者:Armel Le Cleac’h、Banque Populaire VIII号、74日3時間35分46秒
これまでに、単独・無寄港・無補給で世界一周をするヨットレースは「Vendée Globe」しか存在しません。1968年、この種の周航レースの草分けとなった3つの岬(喜望峰、ルーイン岬、ホーン岬)を巡る「Golden Globe」が始まりました。「Vendée Globe」はその先例に倣って創設されました。1968年のレースに出場した9人の先駆者のうち、英国コーンウォール州の主要な港町であるファルマスに無事帰還できたのは、たった1人だけでした。英国人セーラーのRobin Knox-Johnstonです。彼は洋上で313日間過ごした後、1969年4月6日、ようやくゴールにたどり着きました。それから20年後、「BOC Challenge」(寄港をともなう単独航海の世界一周ヨットレース)で2度の優勝を果たしたナビゲーターのPhilippe Jeantotが、新たな世界一周レースを発案。ただし、今度はノンストップだと言うのです!こうして「Vendée Globe」レースが誕生したのです。1989年11月26日にスタートした第1回大会には、13人のセーラーが出走しました。レースは3ヶ月以上におよび、レサーブルドロンヌに帰還できたのは7人だけでした。
現在、本レースは人々から「海のエベレスト」と呼ばれています。第1~8回の大会に合計167人の挑戦者が参加し、この途方もないレースのスタートを切りました。何とかゴールに辿り着いたのは、そのうち89人だけでした。この数字ひとつとっても、地球規模のこのレースが極めて困難であることがよく分かります。「Great South」と呼ばれる南氷洋を単独航海するレーサーたちは、氷のように冷たい巨大な波と悪天候に立ち向かわなければなりません。何といっても「Vendée Globe」とは、いくつもの海を乗り越えながら自分自身の心の奥底と向かい合う旅路なのです。本レースは偉大なセーラーを輩出しています:1990年-Titouan Lamazou、1993年-Alain Gautier、1997年-Christophe Auguin、2005年-Vincent Riou、 2013年-François Gabart、2017年-Armel LeCléac'h。FinistèreチームのスキッパーであるArmel LeCléac'hが、74日間という当レースの新記録を樹立しました。本レースで2度優勝したセーラーは、2001年と2009年に優勝したMichel Desjoyeauxだけです。第9回Vendée Globeが2020年11月8日にスタートしました。